水質階級編:用語「貝」説!

製作:前橋工科大学大学院 阿部 泰宜

第一回となる今回は、水質階級について取り上げていきたいと思います。
「この生物は水質階級Uの指標生物」などと使われますが、
これは一体どんな意味をもっているのでしょうか?
また、従来の水質調査とはどのようなところが異なるのでしょうか?
それらを参考文献を基に解説していきたいと思います。

まず、「水質階級」とは……、

「きれいな水でしか生きることのできない生物や、汚い水でも生きることができる生物などを用いて、
 その水域の水のきれいさをT〜Wという4つの階級に分類したもの」
を言います。

30種の水生生物と水質階級との関係はこのようになっています。

水質階級生物名
Tアミカ、ウズムシ、カワゲラ、サワガニ、ナガレトビケラ、
ヒラタカゲロウ、ブユ、ヘビトンボ、ヤマトビケラ
Uイシマキガイ、オオシマトビケラ、カワニナ、ゲンジボタル、
コオニヤンマ、コガタシマトビケラ、スジエビ、ヒラタドロムシ、ヤマトシジミ
Vイソコツブムシ、タイコウチ、タニシ、
ニホンドロソコエビ、ヒル、ミズカマキリ、ミズムシ
Wアメリカザリガニ、エラミミズ、サカマキガイ、
セスジユスリカ、チョウバエ
30種

このように水の汚れの程度の判定に用いられる生物を指標生物と呼びます。
これらの「指標生物」が目的の水域にどれだけ生息しているかを調査し、
水質を判別する方法を生物学的水質判定と呼びます。

ここで、水質階級と、専門的にいわれる生物学的水質階級(汚水生物系列)との関係は、このようになっています。

しかし、このように示されてもあまりそのイメージが浮かびませんが…、
まぁ、やはり「きれい」「汚い」というアバウトな感覚で捉えるのがよいと思います。
実は、日本の河川の60%以上が水質階級Tに分類されています。
なんだか意外ときれいなのかもしれません。(どこで調査したのか?など気になりますが…。)

水質階級の判定の方法といたしましては、当然のことながら、
その階級に属している生物の数が多く確認された階級がその水質の階級になります。
その水域に1つの階級の生物しか存在しないということは稀なため、
「水質階級Wのサカマキガイが生息していたから、ここは水質階級Wだ」
などとは判定されません。
それは、サカマキガイはきれいな水でももちろん生息できるからです。
逆に水質階級Uの生物が水質階級Vの河川に存在することもあるわけです。
その辺は総合的に判断されていきます。
また、生物の数を確認していった結果、2つないしは3つの水質階級で数が同じになった場合には、
VよりはU、UよりはTと低い階級が優先されていくことになります。

さて、そこでです。
ここであげられている「きれいな水」「汚い水」って具体的にはどんなだよ!?ということになります。

通常の水質分析には化学的水質分析が用いられます。
化学的水質分析」ではpH、DO(溶存酸素量)、
BOD(生物学的酸素要求量)、総窒素、総リン、SS(浮遊物質量)などを測定し、
それらから水質の良し悪しを判断します。

明確で定量的な判断基準です。
しかし、水質階級の分類には「BODがいくつ以上で…、SSがいくつで…」などといった化学的に定量化された指標がありません。
だからこそ、指標生物によって「定性化」しようとしたわけです。
おそらく、元々これらの生物を分類していく際には「化学的水質分析」を参考にしていったのでしょうが、
生物と水質を組み合わせていく課程で、「超アバウト」「とても総合的」な判定になっていったのだと思われます。
というか、そうしなければ分類できなかったのでしょう。

さて、この「化学的水質分析」と比べての「生物学的水質判定」の特徴といたしましては、
「化学的水質分析」では得られない、比較的長い期間(過去)の水質を知ることができる
(生態系の分布変化にはある程度長い時間がかかるため)
総合的(大まか)に水質を判定することができる
(「化学的水質分析」のように一つ一つの指標からは判断しない)

などがあげられます。
あとは、特に専門的な知識を要しなくても水質調査ができるため、
子供などが自然や生物と接しながら環境について学習できる、といった特徴もあります。
夏休みの自由研究などにどうでしょうか?(注:かなりの体力と忍耐力を必要とします!)

以上で、「水質階級」の解説を終わります。
言葉足らずでしたが、ご理解いただけたでしょうか?
皆さんのお役に立てたのなら幸いです。
これから更に用語解説は増えていくと思います。
分かりやすい解説を目指していきますので、どうぞよろしくお願いします。

参考文献 
http://www.city.tochigi.tochigi.jp/kakuka/kankyo/kankyo_map/suiseiseibutucyousa/hantei/hantei.html
http://www.kai.ed.jp/webkyou/suisitu/5.htm
http://w-mizu.nies.go.jp/suisei/suisei.html
http://www.knights.co.jp/newscontena/kiji0210_2.html

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