肝蛭編:用語「貝」説!

製作:前橋工科大学大学院 阿部 泰宜

第五回は肝蛭を取り上げてご紹介していきます。

<かんてつ 【肝蛭】>
吸虫の一種。
体長二〜三センチ、体は平たい楕円形で、前端が円錐形に突出している。
虫卵は水中で孵化(ふか)し、中間宿主のヒメモノアラガイに侵入。
成長すると水草に付着し、これを食べた牛・羊・豚・馬などの胆管に至って成虫となる。
人間にも寄生し、腹痛・嘔吐や黄疸(おうだん)などの症状を呈する。

肝蛭と巨大肝蛭の二種類があります。
前者は主にヨーロッパ、オーストラリアなどに分布し、
後者は主にアジア、アフリカ、ハワイなどに分布しています。
成虫も虫卵も後者の方が大きいようです。
治療法としては、ビチオノールの投与が極めて有効とされています。

肝蛭は肝蛭属に属し、雌雄同体で、成虫(親虫)は扁平、
柳葉状で、暗赤色ないしはピンク色です。
寄生部位は胆管で、大きさは2〜5cmですが、宿主の大きさや虫齢に左右されます。
日本のウシには、欧州、米国本土などに分布する肝蛭(Fasciola hepatica)と
ハワイ、アフリカなどに生息する巨大肝蛭(F. gigantica)が寄生していると考えられています。
増幅動物である中間宿主(intermediate host)は、比較的水がきれいな水田、小川、池などに生息するヒメモノアラガイです。
1匹のミラシジウム(※注)が貝に侵入すると、
約1ヶ月後には100匹以上のセルカリアとなって貝から水中に泳ぎ出ます。
セルカリアは稲、セリ、クレソンなどの植物の茎や葉に付着し、
尾部を切り離して被嚢し、メタセルカリアになります。
メタセルカリアの多くは水面直下に見られ、
こうして植物とともに終宿主(final host)の反芻動物などに食べられるのを待っています。
(※注釈:肝蛭は何度も形態を変えるため、このように呼び方が変化します。)

日本では1926年の初発生以来、1990年までに65例の報告があり、
年齢的には、小児から老人までと層が広く、職業別では農業・酪農業者に多くみられます。
近年ではウシを取り巻く環境の変化により、寄生率が低下の一途を辿っているため、
一種の地方病的存在になりつつあります。
しかし、輸入牛の着地検査で高い寄生が認められており、また、奈良公園のシカに大発生した過去の経緯から、
野生動物が保有宿主(reservoir host)としての役割を担っていると考えられます。
最近、アイルランドでは緬羊の肝蛭症が大発生し、被害額は2千5百万ユーロ(約33億円)にも上りました。
流行源は保有宿主の野ウサギと推定されています。
耕畜連携の有機畜産が注目され、安全な国産稲ワラの高度利用法も再検討されている昨今、
環境に優しい農法の展開により肝蛭症が再興する可能性もあります。

肝蛭症の予防法として、

などが挙げられます。

参考文献
http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/kantetu/kantetu.html
http://www.nurs.or.jp/~academy/igaku/u/u32.htm

前橋工科大学梅津研究室HP阿部泰宜HP愉「貝」な仲間たち!用語「貝」説!肝蛭編