カキ(牡蠣)編:愉「貝」な仲間たち!

製作:前橋工科大学大学院 阿部 泰宜

第六回は、カキ(牡蠣)について取り上げます。

マガキ  (…取れませんでした。)
学 名 Crassostrea gigas
英名 Japanese oyster(Giant pacific oyster)
和 名 マガキ
二枚貝綱
翼形亜綱
ウグイスガイ目
カキ超科 イタボガキ科

海の貝特集第2弾。
そして、ついに二枚貝をクローズアップです。

世界には、100種類以上のカキがあると言われ、
そのうち、日本では、約20種類のカキがあると言われています。
産業的に有名なのは、日本・韓国に代表されるマガキです。
マガキは、広島型・北海道型・宮城型・熊本型に分類されています。
また、日本で生産されているマガキ以外の主なカキには、
イワガキ(日本海・酒田市)、スミノエガキ(有明海)、ケガキ(房総)、イタボガキ(淡路島・石川県)があります。

カキの名前の由来は?
 石から掻き(かき)落としてとることから。
 または、殻を欠き(かき)砕いてとることから「カキ」と呼ばれる。
 「カ」は、貝。「キ」は、着るの意味がある。
 つまり、貝を着ているのがカキである。
 キハカヒ(際貝)の反対の意味。
 重なり貝の意味がある。
 「マ」は、同類中で、代表的・中心的なものを表す。
 真の〜ということ。どちらの性が、強くても同じように生殖腺が白いので、
 全て雄だと思われる「牡蠣」の字が当てられたと言われている。牡(おす)と読む。

カキは、アサリやハマグリと同じように二枚の貝殻に包まれている「二枚貝」の仲間に分類されます。
アサリやハマグリは、すべて同じような形をしていますが、
カキは、周囲の環境によって細長くなったり、丸くなったり、殻の形が変わります。
殻は、左殻と右殻があり、よく膨らんでいる方が左殻で、
海中の岩などに付着して、平らでふたのようになるのが右殻です。
二枚の貝殻が、貝柱と靱帯でくっついています。
カキは、アサリやハマグリと違い、貝柱は1つしかありません。
また、カキにはフランスガキのように雌雄同体である種と、マガキのように雌雄異体の種があります。
しかし、マガキは、今年は雄で精子を持っていても、翌年は雌にかわり、
卵を持つようになったり、あるいはその逆の場合もあります。
生殖時期が終了すると一度中性になり、その後の栄養状態が良いとメスになり、悪いとオスになるそうです。
このように、カキは雄と雌が年によってかわることがあります。
産卵の方法は、マガキのように卵を海水中に放出する種類と、
フランスガキやイタボガキのように親ガキのエラのところで、卵がしばらく留まっている種類があります。
マガキの場合、雄と雌の親が、卵や精子を海水中に放出し、雄が放精することで、海水中で受精が行われます。
うまく受精すると、卵(0.05〜0.06mm)は次々と分割していきます。
身を包む貝殻は、受精後、たったの1日程で作られます。
その後、約2週間、海水中のプランクトンなどを食べて過ごしますが、
約0.3mmぐらいの大きさになると、付着する場所を探します。
足を出して物の上を動き回ったり、気に入らないとその場所を去ったりします。
気に入った場所が見つかると、左殻を下にして、固着材(セメント質)を出して付着します。
そして、その場所を一生離れることはありません。
広島湾でのこのマガキの産卵は、7〜9月に盛んに行われるので、養殖の場合この間に採苗が行われます。
餌は、植物性プランクトンなどです。
食事は、昼も夜も休みなく1日中行っています。餌を取り込むのは、エラの役目です。
エラは、大量の海水を吸い込み、この中に浮かんでいるプランクトンを取ります。
この時、カキ1個がろ過する海水の量は、1時間に約10リットルにもなります。

カキを養殖する際には、ホタテの殻に穴を空け産卵期に海中に入れ牡蠣を付着させ育てます。
ただ、それだけに育て方や自然の影響で大きく生育が左右されます。
まず種が付いたら湾奥に移動させ、潮の干満の差を利用して海中から空気中にさらします。
広島のカキにはこのように"抑制"と呼ばれる育成の期間があり、
カキが水面に浸からない時には、餌となる植物プランクトンが摂取できないようにします。
それによりカキは餌を摂取することに貪欲になるため、
プランクトンの豊富な沖合いの筏へ吊るされると、しっかり身が詰まったカキになるそうです。
さらに、この"抑制"期間には、「弱い種はなくなり丈夫な種だけ残り成長に適正な数にする」という効果もあります。
抑制期間は翌年の3月頃まで行い、その後は本養成に入りますが、
周囲の山からは栄養価の高いさわ水が注がれ、
また春には雪解け水を運び水温の上昇を抑え牡蠣の成長を助けていきます。
そのために、漁業従事者が中心となって植樹など取り組むなどして、
森を豊かにし、海を豊かにする努力をしています。
特に、その中に溶け込む「鉄イオン」がカキを育てる重要な役割をするのではないかといわれています。
広島ではカキ養殖にかける期間はおよそ1年半。
7月の採苗に始まり、翌年冬にやっと収穫期を迎えます。
収穫後、「高い温度・真水・殺菌」に弱いカキは、
数十秒間、オゾン水を用いて殺菌された後、出荷されていきます。

本来貝類は自分の身を守る為に、外敵に対する防衛手段を持っています。
例えばアサリは砂の中に潜ったり、ホタテは泳いで移動したりします。
しかし、カキの場合、前述したように定着した後はその場所を一生離れることはなく、
外敵が近づいてきても、カキはじっと固く殻を閉ざすだけで、全く動きません。
実はこの「動かない」ということが、カキの豊富な栄養素の秘密なのです。
本来他の貝が運動する事によって消費してしまうはずの栄養素が、
カキの場合は、じっとしている事によって蓄積されていきます。

この、いわば「省エネ型」の生態が、「海のミルク」といわれる所以です。
また、カキは海中から栄養素を取り込んだのちに濃縮して溜め込む性質も持っています。
そうして溜め込まれる栄養素の中でもっともよく知られているのが「亜鉛」で、
他の二枚貝と比べて10倍以上の量を保有しています。
この亜鉛は新陳代謝を活発にし、美肌などの効果があります。

しかし…、
いくら健康に良いとはいっても、カキを食する場合には貝毒が気にかかります。
貝毒とは、ある種のプランクトンの毒性が、それを摂取した貝に蓄えられた状態を指します。
原因プランクトンの種類により、病状は以下のとおりに分類されます。

<貝毒>
カキの場合はアサリなどと違い、一般の人たちが海で採ることがほとんどないため、
養殖業者等がきっちり検査をしていれば、ほとんどの場合、防ぐことができます。
そして、そのセーフティネットはほぼ問題なく機能しており、
広島県の場合、貝毒が発生する時期は、県内の各海域で、貝毒を引き起こすプランクトンの発生や、貝毒の検査が行われており、
規制値を超えた場合は、直ちに出荷規制される仕組みになっています。
貝毒で事故を起こすのは、カキの場合であれば、チェック体制のミスとしか言いようがありません。

<腸炎ビブリオ>
腸炎ビブリオは好塩菌で、海中へ普通に存在しています。
海水温が20度を超えると増殖するので、冬場のカキであれば気にする必要はありません。
地域にもよりますが、海水温が20度を超えるのは、5月から10月くらいまでと推察できます。
よって、問題は夏のカキということになります。
しかし、この菌は貝毒とは違い、海に由来するものであれば、何にでも付着している可能性があるため、
カキだけを特別視することはできません。
カキに限らず、夏場の魚介類を生で食べる際は、腸炎ビブリオに気を付ける必要があります。

<大腸菌>
大腸菌の中でも病原大腸菌、 腸炎をおこす大腸菌を指します。
昔は事故も多かったようですが、現在ではほとんどの業者が、
三重県的矢の「佐藤養殖場」が1953年に確立した紫外線照射した殺菌海水による浄化を行っています。
この浄化法は、カキが一日に大量の海水を摂取し、
鰓(えら)で珪藻類を漉すことにより、養分を摂取していることを逆手にとった浄化法です。
つまり、殺菌した海水の中へカキを浸け、体液を循環させることにより、カキの体内に残った大腸菌を洗い流すという方法です。

<ノロウイルス>
実はカキの食中毒で最も一般的なのはこのウイルスによるものです。
少し前まで小型球形ウイルス(SRSV)と呼ばれていましたが、
2002年の国際ウイルス学会で正式に「ノロウイルス」と呼ばれるようになりました。
細菌とは異なり、ウイルスの性質が悪いところは、
カキの中に存在していたとしても、その駆除が極めて難しいことや、
ノロウイルスが人間を主な宿主として選定しているためです。
カキの中で増殖するのではなく、カキの中ではおとなしくしていて、それを食べた人間の中で増殖を始めます。
体力が弱っていると身体がウイルスに負けてしまい、発病することが多くなります。
ただし、ノロウイルスは空気感染することもあるため、インフルエンザと同じように、
カキだけを目の仇にしても仕方がない部分があります。
また、ノロウイルスに当たると、高熱、下痢、悪寒などの病状がありますが、
直接的に命を取られることはあまりありません。

これは貝毒以外に共通することなのですが、しっかり熱を通せば当たることはありません。
また、大量に食べることも控えたほうがよいとされています。
これは、A型肝炎ウイルスが経口感染する可能性が高くなるためです。
A型肝炎はその他の肝炎に比べて重症化・慢性化することは少なく、大抵は完治します。
さらに、15歳以上の日本人のほとんどはA型肝炎ウイルスに対する抗体(HA抗体)を持っているため、
感染しても発病しないことが多いようです。
美味しいものに惹かれる気持ちは分かりますが、くれぐれもご用心ください。

参考文献
http://shell.kwansei.ac.jp/~shell/index.html
http://www2.ocn.ne.jp/~hiroseki/kakibunrui.html
http://www.kaishoku.com/jimono/oyster1.htm
http://www.ana.co.jp/cargo/information/bimonth/crg022002/02.html
http://www.ffortune.net/sex/reproduct/history.htm
http://www.veristores.com/kunihiro/usrpg.asp?note=8
http://www.s-shinseikai.com/seisansha/takahashitokuji/make_zai_kakifly.htm
http://cnt01.megaegg.com/mg/gourmet/issue2_bk/0401.php

前橋工科大学梅津研究室HP阿部泰宜HP愉「貝」な仲間たち!カキ(牡蠣)編