肺吸虫編:用語「貝」説!

製作:前橋工科大学大学院 阿部 泰宜

第六回は肺吸虫について取り上げます。

<肺吸虫>
東南アジアの温帯・熱帯に分布する吸虫類の寄生虫。別名肺臓ジストマ。
体長5〜16mmで、体型は楕円形。雌雄同体。
わが国でも暖地の山間部にみられる。
ヒトや他の哺乳類の肺に寄生する。
卵は約20日で幼虫になり、第一中間宿主のカワニナの体内にはいって成長し、
第二中間宿主のモクズガニ・サワガニなどの体内に移り、
これを生で食べた哺乳類の肺に寄生して成虫となる。
血痰・喀血、慢性のせきなど肺結核に似た症状をおこす。

日本では5種類の肺吸虫が知られていますが、
人体感染例はウエステルマン肺吸虫(Paragonimus westermanii)と、
宮崎肺吸虫(P. miyazakii)の感染が主体です。
感染はサワガニ・モクズガニ・アメリカザリガニなど、第2中間宿主内のメタセルカリアを摂取することによりますが、
淡水産カニを生食することはないので、調理不十分なカニを食べるか、
調理の際、まな板や包丁に飛散したメタセルカリアをサラダなどを介して、
摂取して感染することが多いようです。
また、モクズガニの老酒漬けから感染した例もあります。
その他、最近は幼虫が筋肉内に寄生しているイノシシなど待機宿主の肉を生食して感染する症例も多数報告されています。
ウエステルマン肺吸虫は肺の中に虫嚢を形成しますが、
宮崎肺吸虫が人に摂取された場合、通常は肺実質内に入ることはなく胸腔内にて生息します。
日本では北海道を除く各地にみられ、特に四国・九州などに患者が多くみられていましたが、
最近は治療法の発達によりかなり減少してきています。
現在、その症例数は年間約5〜15例程度です。

「病態」
ウエステルマン肺吸虫症の場合は肺実質を破壊し、
虫体の周囲は反応性慢性炎症による間質組織の増殖がみられます。
喀血、チョコレート色の汚い血痰が続きますが、全身状態は比較的良いようです。
ときに膿胸、自然気胸がみられ、胸部X線陰影は輪状影、結節影、浸潤影などの所見を呈します。
喀痰は濃厚粘稠、黄褐色または暗褐色です。
迷入による脳肺吸虫症では頭痛、嘔吐、てんかん様発作、視力障害、運動痲痺など
髄膜炎あるいは脳腫瘍症状を呈し、皮膚肺吸虫症では皮膚に腫瘤を形成します。
宮崎肺吸虫症の場合は胸腔内に生息し、ときに胸膜に侵入を試みるため、
肺実質あるいは胸膜に損傷を来し、自然気胸と胸水貯留を主症状とします。通常、血痰はありません。
現在、その治療法として、
ビチオノール投与の治癒率は約98%、プラジカンテル投与の治癒率は約96%ですが、
投与日数が短いこともあり、第一選択薬としてはプラジカンテルを用いています。

参考文献
http://jsp.tm.nagasaki-u.ac.jp/~parasite/paragonimiasis.html
http://db.gakken.co.jp/jiten/ha/500670.htm
http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?id=1544130-0000&kind=jn&mode=5

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