無酸素エアー攪拌を用いた脱窒装置の開発


★ LAST UPDATE 2004.11.10 ★


前橋工科大学大学院 工学研究科 建設工学専攻
梅津研究室所属 阿部 真也


第1章 脱窒とは

第2章 生物脱窒処理法

第3章 無酸素エアー攪拌を用いた脱窒装置の開発

第4章 無酸素エアー攪拌を用いた脱窒装置の概要

第5章 オリジナル試作壱号機

第6章 オリジナル試作弐号機

第7章 オリジナル試作参号機

第8章 オリジナル試作四号機

第9章 電子供与体の検討

第10章 磁気処理の影響

近況報告






第1章 脱窒とは

 脱窒とは、亜硝酸態窒素や硝酸態窒素を脱窒細菌(注1)の作用により窒素ガスに還元することをいいます。普通、脱窒は 硝化という異なる機能との組み合わせによって成り立っています。有機体窒素(Org.−N)は細菌 (通常の活性汚泥)の作用によりアンモニア態窒素に分解されます。そしてアンモニア態窒素は硝化工程 において硝化細菌であるニトロソモナスやニトロバクターにより亜硝酸や硝酸へと酸化されます。 ここで作られた亜硝酸や硝酸は脱窒細菌の作用により窒素ガスに還元されます。脱窒細菌は有機栄養細菌に属し 、増殖に際し有機物を必要とします。また、その多くは好気的な条件下では液中の溶存酸素を利用し、 嫌気的な条件下では亜硝酸、硝酸に含まれる酸素を利用する細菌である。したがって脱窒反応を 効率的に進行させるためには、脱窒槽への溶存酸素の混入を出来るだけ防止することが必要である。
 また、脱窒反応において亜硝酸、硝酸を窒素ガスに還元するための水素供与体(BOD源)として有機物 が必要である。排水中にBOD成分のない場合にはメタノールなどの安価で生分解されやすい有機物の 添加が必要である。

第2章 生物脱窒処理法

 現在、生物脱窒処理法は様々に存在します。活性汚泥を沈殿(図−1)させて無酸素状態にさせて行うものや プロペラなどで攪拌をしながら行うものである。また、回分式活性汚泥法(注2)といったものもまず、 反応槽内で爆気を行い硝化をしてその後、爆気を止め沈殿させながら同一反応槽(じゃない場合もあります)で脱窒を行うものである。



図−1 沈殿汚泥による脱窒


 これらの脱窒方法は効果的に反応槽内を無酸素状態にすることが出来るために脱窒反応が おきます。しかし欠点もあります。脱窒反応により発生した窒素ガスが汚泥の中にたまり(図−2)汚泥の表面 積を奪うことやたまった気泡は次第に大きくなり汚泥と共に浮上し水表面に浮いて(図−3)、処理水を排出する際に 多量の汚泥が流出してしまうということや、 沈殿で行う場合には反応槽内に流れが無く硝酸態窒素成分の偏りが出来てしまうこと、プロペラ による攪拌でも縦方向ではなく横方向の攪拌しか起こせないので汚泥が均一に交じり合うことが 出来ないばかりか観察を続けるとはじめは効率よく攪拌できているように見えたものが汚泥の沈 降と共に流れはプロペラの周りのみでしか起きなくなってしまうといった問題があります。


   
図−2 汚泥の中にたまった窒素ガス   図−3 窒素ガスにより水表面に浮いた汚泥


第3章 無酸素エアー攪拌を用いた脱窒装置の開発

 ここで標準活性汚泥法(注3)を思い出してみますと、標準活性汚泥法とは反応槽内に汚泥と未処理の 水を入れ全面爆気などを行うことで汚泥と水を均一に混じり合わせ浮遊した汚泥(バクテリア)は最大限の表面 積を持つことが出来、すばらしい反応速度で硝化反応を起こすといった方法です。これが無酸素状 態で出来たら脱窒反応も効果的に行われるのではないかと考えられます。はたしてそんなことが可能な のか・・・これを可能にする一つのツールを我々は手にしました。吸気、排気が備わったブロワ です。このブロワにより無酸素エアレーション攪拌を用いた脱窒装置が完成に近づきます。この考え方の利点は二つあり 一つは汚泥(バクテリア)が汚水と均一に交じり合うことで最大の表面積をもつことが出来るため 脱窒速度が速くなるのではないかという点、もう一つは縦方向の攪拌を行うため 汚泥が水面に浮上したとしてもそこにとどまることがないという点です。


第4章 無酸素エアー攪拌を用いた脱窒装置の概要

 この装置の構造(図−4)は反応槽を密閉状態(水の出入りはあるが空気の出入りはない状態) にし反応槽の七割くらいに未処理の水をいれ残りの三割に空気を充填させます。そして吸排気の 付いたブロワを用い吸気を反応槽上部の空気の部分で行い排気を反応槽内下部の水の中で行 うことで反応槽内の空気の出入りをなくします。そーすることで最初は酸素が含まれていた空気も 水中に酸素が溶け込みその酸素を微生物が消費することで無酸素状態のエアレーションにより縦方向の攪拌 を起こすといったものです。これで効果的な縦の攪拌は完成しました。
 しかし、この方法にも無視できない大きな問題が浮上しました。個液分離の問題です。脱窒菌の卓越した 汚泥というのは普通の活性汚泥と比べさらさらでフロック化されにくくの塊が大変小さいものです。そこで個液分離 に関しては様々なやり方が考えられます。たとえば重力沈殿や膜ろ過というものがあります。 膜ろ過も大変難しく細かい膜はすぐに、目詰まりを起こし粗い膜では すべてが通過してしまうというものでした。結局のところこれらはどのようなメンテナンスを考え 用いるのかというところに集約されます。一時間に一回なのか、一日一回なのかそれとも一週間 に一回なのか(一週間に一回はまぁ無理だと思いますが)または、ろ過面積をどれくらいとるかで 処理量は決まってくるということなんです。もちろん処理水は出来るだけ透明を目指すのですが・・・
(この装置の特許に関するものはこちらのほうに連絡してください。)



図−4 無酸素エア攪拌を用いた脱窒装置構造図


第5章 オリジナル試作壱号機

 第3、4章において偉そうに書きましたがこれ開発したのは私の指導教員の梅津先生です。そして、特許も取得済みです。 しかし、第4章でも述べました通り固液分離が大変難しい。ちなみに先生の考案した装置はフェルト状炭素繊維でろ過を しており強大なろ過面積を必要としていましたので水量の多い装置には向かないのではないかと考えました。ここで、私は 一つ目の装置(図−5)としてろ過をせずに固液分離を行う装置を考えつき試作しました。 この装置は連続処理で私の工夫した点は処理槽と沈殿槽を処理槽の底部から沈殿槽に上向きに45度のパイプでつなぎ 沈殿した汚泥は処理槽に返送されることです。本装置は以下のよう流れとなっています。流入は処理槽の上部から流入 し処理槽で処理され処理槽底部から上向き45度のパイプを通り沈殿槽に入り、沈殿槽で鉛直上向きの流れを作り 流れによる速度よりも汚泥が自重により沈降する速度の方が速いのではないかと考えたためろ過をせずに 固液分離を行い流出が出来るのではないかと考えました。
 しかし、私の予想以上に処理槽から沈殿槽に汚泥が流出し沈殿槽で脱窒が起こり汚泥の塊が浮上し流出してしまうという ことになりました。また、極微小の汚泥も沈殿することなく流出してしまいました。そこで私は、ろ過に手を出しました。 設置箇所は処理槽と沈殿槽の間のパイプに一つ、流出口に一つつけることにしました。ぜんぜん駄目でした。 具体的に何が駄目であったかというとろ過膜の径の選定が非常に難しく、処理槽と沈殿槽の間、流出口の順に 細−極細、極細−極細というような膜の口径で試しましたが、一つ目の組み合わせでは処理槽から沈殿槽への汚泥の 流出を止めることは出来ず流出口で膜が詰まってしまいました。二つ目の組み合わせでははじめはうまくいっていましたが 処理槽と沈殿槽の間の膜がすぐに詰まってしまい沈殿槽に水が流れなくなってしまいました。このような失敗を経験する中で 私は、ろ過とそのろ過膜の逆洗は絶対に必要であると感じました。「ろ過と逆洗」これがこの装置を考える中で 最大のキーワードとなりました。そして、ついにひらめいたのです。



図−5 オリジナル試作壱号機


第6章 オリジナル試作弐号機

 ただいま実験中です。キーワードは「ろ過と逆洗」です。そして、わが研究室らしく 逆サイフォンを使ってます。処理方式はバッチ処理です(図‐6)。この装置はすこぶる快適な 処理を行っていました、はじめは。しかし、バッチ処理でリアクターの中の水を一気に入れ替えるの でその際に大量の溶存酸素が流入し処理を妨げる原因となってしまいました。そこで、現在は リアクターの中の水を一気に替えるのではなく30分に一度処理水の五分の一程度の水を入れ替える ことにより大量の溶存酸素の添加というものを防いでいます。そして、円滑に処理が行われています。 しかしこの装置は排出の調節が大変難しく失敗すると流入が起きなくなってしまい処理が止まって しまいます。そのためこの装置の流入、排出には十分注意する必要があります。そしてこの装置は そこをしっかりと注意しておくことでその他のメンテナンスはほとんど必要ありません。
 と、思っていました。しかし、長期間使用をしていると少しずつフィルターが詰まり最終的には 排水不可能になってしまいました。そのため、現在では3日に一回程度、フィルターをもんで目詰まりを 解消することで快適な処理を行っています。



図−6 オリジナル試作弐号機(内部構造などは秘密です)


第7章 オリジナル試作参号機

 こちらもただいま実験中です。試作弐号機はバッチ処理式の装置でしたが今回は連続処理、バッチ処理 のどちらにも利用可能です。そして今回はリアクターの底部でフェルト状炭素繊維を用いてろ過を行い、 ろ過したものをエアリフトポンプにより排出します。そして流入ですがサイフォンによる流入としました。 エアリフトポンプにより排出された分だけ流入するという仕組みです。こうしたことによる利点は フェルト状炭素繊維が目詰まりを起こしても処理水が溢れる心配が無いということです。しかし、 この装置はろ過方向と重力方向を同じにしたため汚泥が底部にたまってしまいました。しかし、それでも フェルト状炭素繊維は目詰まりを起こしませんでした。そのためリアクター内部に死水域を作らないように することでこの装置は更に効率が上がるのではないかと考えられます。また、この方法では底部の フェルト状炭素繊維の下に気泡が溜まる事がありそれにより炭素繊維が浮上してきてしまうことがあります。 この実験よりやはりろ過方向と重力方向は同一でない方向としたほうがよいのではないかと考えられる。

第8章 オリジナル試作四号機

 こちらはまだ実験開始していません。構造的には三号機とほとんど同じです。唯一違うのは処理水と汚泥の固液分離を行っている 物理ろ過のろ下方向が水平方向であるということです。その他の違いはありません。今後、長期間使用し観察を行います。

第9章 電子供与体の検討

 普通に考えるとやはりメタノールやエタノールの液体添加が現実的なようですが、この装置は完全密封な実験装置であるために 液体での添加が出来ないという訳ではないのですがやりにくいのが現状です。そこで、考えられるのがメタノールの気体添加です。 この装置では気体の出入りがないためメタノールの気体添加が可能なのです。しかし、メタノールの使用の問題としては本実験 装置が密閉であるために多めに添加してしまうと処理水中にとけ残ってしまい処理水を水槽に戻す前段階に爆気槽などが必要となってしまいます。 また、添加量の調節が大変難しいなどの問題もあります。そこで、現在、以下のものに着目し電子供与体の検討を行っています。

 1、目に見えるもの
 2、流動床となりえるもの
 3、生分解性でカスが残らないもの
 4、低コストであること
 5、表面積が大きいもの

第10章 磁気処理の影響

 私の学部の頃からの研究に水の磁気処理というものがあります。この磁気処理とは簡単に説明すると水を磁場にとうすだけで 効果が得られるとされているものです。しかし実際に私が行った実験ではそのような簡単なものではありませんでした。 私が脱窒装置に磁気処理を応用した理由は、磁気処理が酸化還元電位を下げるということが報告されているからではなく 、私の行った実験において微生物(硝化細菌)に影響を与えているのではないかということがわかったからです。もしかしたら 硝化細菌だけでなく脱窒菌にも何らかの影響を与えるのではないか、もしかしたら脱窒を促進するのではないかと考えました。
 そこで、実験を行いました。まず、反応槽と貯水槽を用意しました。反応槽には試作三号機を用いました。貯水槽には俗に40cm水槽 と呼ばれている水槽を用いました。有効水量は25Lです。この反応槽と貯水槽を使用し磁気処理ありと磁気処理なしで比較実験を行いました。 磁気処理は貯水槽の中で行いました。
 実験結果ですが磁気処理ありが磁気処理なしより高い除去率を示しました。また、磁気処理を行っていた方でORPが低い値を示していました。 これらの原因については現在調査中です。


図−7 硝酸態窒素濃度の変化


図−8 ORP(酸化還元電位)の変化


近況報告

 現在オリジナル試作参号機、四号機で実験を行いながら現在課題としているのは以下のものを考えています。


1、エアポンプの運転時間(攪拌を間歇に行うほうが良いのか?)
   攪拌と沈殿を交互に行ったほうが処理効率が良いのではないかと
   考えています。
   一定時間沈殿させ必要最低限の攪拌を行うことが望ましいのではないか。
2、実装置に応用する際に連続処理かバッチ処理か。
   連続処理は常に硝酸塩の濃い水が流れてくるがバッチ処理の場合処理が進む
   につれ処理槽内の水は硝酸塩濃度が薄くなり処理効率が下がるのではないか
   と考えています。
3、他の処理方法との比較(沈殿法や、プロペラ攪拌による方法など)
   本当に無酸素エアー攪拌による脱窒装置が一番いい生物脱窒処理法
   なのか。
   処理能力だけでなく運転管理も含めて。


現在これらのものを考えより良い処理方法の提案を検討しています。



(注1)
 脱窒細菌とは最終電子受容体として硝酸態窒素を利用する微生物は活性汚泥中に普通に存在している。
少なくとも40種の脱窒細菌の存在が環境水中で知られている。
活性汚泥では、Achromobacter,Alcaligenes,Arthrobacter,Bacillus,Flavobacterium,
Hypomicrobium,Moraxella,Pseudomonasなどに属する細菌が脱窒反応を行う。
また、無酸素槽のある活性汚泥システムでは、活性汚泥微生物の82〜97%が脱窒能を持つという。

(注2)
 回分式活性汚泥法とは回分式活性汚泥法は、単一の水槽で(1)汚水の流入、(2)ばっ気・攪拌、 (3)沈殿、(4)処理水排出を繰り返し行う高度排水処理法です。 中小規模の下水道や産業廃水処理施設で実績が多く、以下のような特徴があります。

 1.微生物(硝化・脱窒菌)による窒素除去が可能
 2.沈殿槽不要で省敷地
 3.時間制御で流入負荷変動に対する融通性がある。

(注3)
 標準活性汚泥法とは微生物を含んだ活性汚泥と下水を混合し、微生物が下水中 の有機物を分解するのに必要な空気を送り込んで攪拌します。 これにより下水中の 有機物が分解されます。また、最初沈殿池で取りきれなかった浮遊物の一部も活性汚泥フロック (かたまり)に取り込まれて除去されます。

参考文献
Jiri Wanner:活性汚泥のバルキングと生物発泡の制御
栗田工業株式会社、吉村二三隆ら:わかりやすい水処理設計
栗田工業株式会社、吉村二三隆ら:これでわかる水処理技術
山中健生:環境にかかわる微生物学入門
盛下勇:下水処理と原生動物
末石富太郎ら:土木教程選書衛生工学


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