磁気処理水の亜硝酸態窒素処理に関する実験的研究

前橋工科大学大学院 学生員 ○阿部真也
前橋工科大学     正会員  梅津  剛

1.はじめに
 現在、水環境分野において様々な水処理手法が用いられている。その中で注目されているものに磁石を利用した磁気処理がある。磁気処理水の特性としては、酸化還元電位の低下による藻類、菌類の増殖の抑制や極微コロイド不純物の凝集作用の促進、水棲生物の成長の促進などが報告されている。磁石を用いる利点としては、磁力の劣化はほとんどない1)ため長期間の仕様に適しメンテナンスの問題が軽減される。また、水を磁場に通すだけで磁石の効果を得ることができるためランニングコストが低く、既存の水処理装置への容易な設置があげられる。著者らはこれらの特性を水処理手法において大変重要であると考えている。したがって、磁気処理が水処理手法として適していると考えられる。しかし、その処理効果の報告例は多いが再現性や科学的データが絶対的に少ないのが現状である。また、そのメカニズムについてもほとんど解明されていない。
 そこで本研究では、著者らが以前行った海水魚の生存実験、淡水魚の生存実験2)より得られた知見に基づき亜硝酸態窒素濃度の変化に与える磁石の影響を実験を行い調査するものである。

2.実験概要
2.1実験目的
 著者らが以前行った海水魚の生存実験、淡水魚の生存実験においてアンモニア態窒素濃度、硝酸態窒素濃度の変化は、磁石の有無にかかわらずほとんど違いが現れなかった。しかし亜硝酸態窒素濃度だけは海水魚の生存実験においては26日目から、淡水魚の生存実験においては32日目から図-1、2のように磁気処理を行った装置で減少するといった知見を得た。そこで本実験では、亜硝酸態窒素濃度の変化に与える磁気処理の影響を調査することを目的とする。
2.2実験方法
 本実験は、図-3に示される装置を用いる。この装置を2つ用意し、片方の装置は磁石を使用し、もう片方の装置では磁石を使用しない比較実験とする。本実験装置の特徴は、容量が極めて小さいことである。装置の容量を小さくした理由としては、処理量を減少させることで磁気処理による影響を現れやすくするためである。実験条件は水量2.5L、循環ポンプによる単純循環を行いその流量は2.83cm3/s、磁石は570mTのものを使用する。本実験では、磁石に挟まれたΦ13mmの管内の流れを層流にするために、レイノルズ数との関係で流量を2.83cm3/sとした。この時のレイノルズ数は276となる。ただし、水温は20℃とし動粘度は1.004×10-6(m2・s-2)とする。管内の流れを層流にした理由としては、磁石は、もともと磁力線に対して直角に物体が移動する時に電流が流れる。そのため磁力線に対して、直角に水が流れることのできる層流が最も磁石による影響を受けるのではないかと考えているからである。実験に用いる水は水道水を1日爆気し、アンモニア溶液を加えアンモニア態窒素濃度を4.65mg/Lとしたものを使用する。ここでアンモニア溶液を加えたのは、亜硝酸態窒素濃度の変化を調査したいが亜硝酸は大変不安定なためアンモニアを硝化させ亜硝酸を増加させるためである。また、生物などによる連続的な負荷を与えなかったのは、この現象の詳細なデータを得るためである。磁石内は図-4のようにN極とS極に挟まれた磁場を水が流れる仕組みである。この磁石は強力な磁場を発生するため外部に磁場を漏らさない構造になっている。
 水質の測定項目は、アンモニア態窒素濃度、亜硝酸態窒素濃度、硝酸態窒素濃度、pH、酸化還元電位とする。
2.3実験結果と考察
 亜硝酸態窒素濃度は図-5のように変化した。磁石を用いた装置において全体的に亜硝酸態窒素濃度が低くなるという結果が得られた。アンモニア態窒素濃度、硝酸態窒素濃度、pHは、磁石の有無にかかわらず同じように推移するという結果になった。これらの結果から磁気処理は、亜硝酸態窒素の増加を抑制させることがわかった。しかし、そのメカニズムの解明には至らなかった。著者らの考察するところでは、磁石の有無にかかわらず同じようなグラフの形状になったため、磁気処理が直接的に水に影響を与えていることも考えられるが、磁気処理が微生物を活性化し、結果的に亜硝酸態窒素の増加を抑制している可能性もあるのではないかと考えている。また、酸化還元電位においては、磁気処理により還元作用が増すため低下するという報告がされているが本実験においては、図-6に示されるように磁石を用いた装置では、一度上昇し24時間後に最大で178mvを示しその後低下し、70時間後に30〜50mvで収束した。磁石を用いない装置では、はじめから低下し35時間後に-5〜10mvで収束した。最終的には、磁石を用いた装置より磁石を用いない装置のほうが低い値を示した。これは、報告事例とはまったく逆の結果となった。

3.おわりに
 著者らが以前行った実験と同様に磁石を用いた装置において亜硝酸態窒素濃度の増加を抑制することができた。しかし、この現象のメカニズムがわかっていないため磁石の強さや流量を換えて実験を行う必要がある。今回は、管内の流れを層流にして行ったので層流と乱流での磁石による影響の受け方の違いや処理効率の違いなどを調査することが必要である。また、亜硝酸態窒素はアンモニア態窒素や硝酸態窒素より生物に有害であるため亜硝酸態窒素の増加を抑制することのできる磁気処理は、池水浄化などの水環境問題の改善手法として様々なものへ応用の可能性があると考えられる。






キーワード:磁石 磁気処理水 亜硝酸態窒素

参考文献
1)谷腰欣司:磁石と磁気のしくみ,日本実業出版社,pp.34-35,2000
2)阿部真也・梅津剛:第30回土木学会関東支部技術研究発表会講演概要集、水環境問題への磁石の利用に関する実験的研究