生物膜を利用した油処理手法の検討

 

前橋工科大学 学生員 ○盛山 健太

                                前橋工科大学 正会員  梅津  剛

 

1.はじめに

現在、タンカー事故による油漏れ、採掘プラットホームからの油流出、川沿いや海岸沿いにある工場から流れ出る廃油など、油による水環境への被害が深刻化している。このように一度に大量の油が自然界へ放出されると,その処理は長時間を必要とする困難なものとなる。流出油処理には、油防除機材や付着機材を使用する手法などが報告されているが、それらはあくまでも回収材であり処理とはいえない。また、油処理剤による処理方法もあるが、油処理剤は合成界面活性剤を主成分としているため、二次汚染の問題がある。環境問題に対応した油処理技術が求められており,生物的,化学的,物理的な見知から数多くの検討がなされているが、現在のところ、油分解微生物の探索、油分解のメカニズムの解明、効果などの確認といった実験室レベルの基礎研究が主であり、実用化には至っていない。

 通常、全ての油は、好気性微生物処理により、無機化され、二酸化炭素、水に生成されるといわれている。本研究では、油成分の微生物処理1)の効果を確認するとともに、装置の開発を行い、システムとしての機能を考察するものである。

2.高濃度活性汚泥による油処理の検討

本研究では油による海洋汚染に着目している為、実験に用いるサンプル水には人工海水を用いた。本実験に用いる活性汚泥は著者らが行っている海水魚飼育によって発生したものを使用する。この活性汚泥を用いて

油処理反応の観察を行う。

予備実験として、実際の反応を観察するため、直径100mmの円筒形の反応槽を用い、濃縮した海水汚泥2,000mL(MLSS:10,000mg/L)と油300mLを入れ、エアーポンプ(19.0 L/min)で曝気する。

本実験における反応の特徴と知見を、以下に挙げる。

     開始直後:活性汚泥と油は混ざりながら、発泡しつづける(図1)。

     2時間後:粘性を帯びた泡となり、減少する。

     3時間後:泡の下で、油が凝結しはじめる。

     4時間後:泡は、消える。

     6時間後:容器表面に粘性の強い白濁した油が覆う。

     24時間後:油が白濁し、固まり始める。

48時間後:水面には油の粘性がなくなり、油が凝固し、固形物(図2)が、汚泥の中で浮遊するのを確認した。この後、この固形物が、小さく硬くなる。二週間経過しても、この固形物は、完全に消滅せず、極めて長時間の処理が必要であると考えられる。

3.二槽移動式散水濾床による油処理実験

基礎実験の知見より実用性を指向したバッチ処理型の生物膜処理システム2)を作製し、実験を行った。作製したシステムを図3に示す。本システムは全く同じ二つの反応槽から構成されており、容量7Lでストランド型の接触濾材を充填している。本手法は、片方の反応槽に水を溜め、水中ポンプによって水を交互に入れ替えるもので、泡をたてず炭素繊維の生物膜に付着した微生物群に溶存酸素を与えることができ、またその表面に油を含んだ水を接触させて生物学的浄化を図る。

 

4.実験結果

グラフ(図4)より、実験開始後では変化はみられなかったが、2日目からは油の減少が見られた。このとき、油の減少とともに水が白濁した(図5)。これは、微生物と油が接触することにより一部の成分が溶出したと推測される。この白濁色の水は、油膜の存在が消えても変化はみられなかった。実験開始から十日間で水表面に油の粘性などはなくなった。また、活性汚泥による油処理では固形物が残っていたが、この実験に関してはそのようなものは残らなかった。濾材に付着できたと考えられる。

 

5.おわりに、

本実験では生物膜を利用することで、活性汚泥の油処理での問題点を考慮し、処理が可能である。しかし、生物膜による白濁した水の浄化については次回への課題といえる。

油処理については、解明されていない部分も多くあり、更なる実験が必要である。それにより装置の開発、システムとしての機能に構想できる。今後の展開としてよりわかり易い油の迅速な分解、現象、それらの効果について調査していく所存である。また、低濃度オゾンの泡沫浮上分離装置3)との併用により、油成分の分離と処理の双方を行う手法も検討中である。