私の卒業研究についての紹介です。
ここ梅津研究室では、以前から屋上緑化の研究をしています。
本研究ではこれまでの屋上緑化の研究を応用して、
壁面緑化の方法について検討します。
研究の計画、実験結果、観察記録等を載せていきたいと思います。
・研究内容・問題点・根床材の選択・植物の選択・壁面緑化モデル・緑化評価ソフト |
・ 4/26 研究発表資料(ppt)・ 6/ 7 研究発表資料(ppt)・ 7/ 5 研究発表資料(ppt)・10/11 卒業研究中間発表プレゼンテーション資料(ppt)研究概要書 (PDF 200KB)・卒業研究論文 |
壁面緑化です。垂直に立つ壁の面に、どうすれば植物を生やすことができるのかってことを研究しています。
コンクリートだらけの大都会では最近、池や緑地が減ることが原因で気温が上昇しています。ヒートアイランド現象ってやつです。
その対策として注目されたのが屋上緑化です。ビルとか工場の屋上に植物を生やすことで、植物の蒸散効果で気温を下げようとする計画です。
そして、さらに緑地を増やせないかということで屋上緑化を応用したのが壁面緑化です。
しかし、普通は水平な地面に生える植物。そう簡単には根付かなそうです。
そこで、今までのうちの研究室の屋上緑化の研究を応用して壁面緑化をやってみよう。となりました。
どんな植物を、どうやって、どのくらい世話をして、どのくらい増えて、どのくらい生きるのか。
そんなことを調べていきます。
では具体的に、壁に植物を生やすにはどんなことが問題になるか。
生える生えないの前に、まず土が使えない。使えないこともないけどそのままでは使えない。
しかも、垂直に立てるってことは、重力加速度:G=9.81N/s*s がモロに加わるってこと。
ビチャビチャのスポンジでも10分たったら乾きます。だから物凄い保水力が必要。
さらに、建物のことを考えて、軽いこと。腐らないこと。そして何より植物が生えられる素材。
根床材(植物が根を張る部分。普通は土)に必要な条件はサラッとこんなもんでしょう。
次は植物。研究をやってて物凄く実感したことが暑い事。群馬だし。
そして冬には強風が。群馬だし。さらに大雨。乾燥。と、このように気候の変化が一番。
コンクリート表面が70℃まで上がる、群馬の灼熱炎天下の中でも生きていけて、冬の乾いた冷たいからっ風にも耐えられて、
ゲリラ雨や台風にも、そしてなんといっても重力に耐えられることが植物の最低条件。
あとは水のやり方。散水方法。ジョウロで毎日ちびちびかけるわけにはいかない。30分でカラッカラですから。
できれば常に掛け流しにしたいところです。タイマーを使っても1時間間隔では掛けたいとこです。
さらにできれば散水と同時に液体肥料もかけられる仕組みにしたい。そして腐らない程度に排水したいです。
このように、縦にするってだけで、植物にとっては物凄く厳しい条件になるのでした。
果たしてこんな条件でも生きていける植物はあるのでしょうか。
土の代わりになる根床材はあるのでしょうか。
それがあったんです。 では次へ。
では、まず根床材から。
軽くて、保水力が高くて、腐らなくて、植物が生きていける。
しかも土と違って立てても崩れない素材。
そんな優れ物があったんです。それがこの炭素繊維マットです。
|
|
|
炭素の細い糸が絡まってできたマットです。目が粗いフェルトを厚くしたやつってところです。
本来ビオトープにいれて微生物を付着させたり、魚の産卵場となったりするいろんな応用が利くものですが、
植物の根床材にまでなるのでした。
しかも、密度0.012g/cm3で軽い。細かい糸のかたまりだから保水力が高い。
マット状だから立ててもよし。
さらに腐らない。
文句のつけようがない、ホントに良い事だらけの炭素繊維マットです。
そういえばこの色。真っ黒なんですが、この黒さが後々物凄く影響してくるとは、このときはまだ知らなかったのでした。
すばらしい根床材が見つかったところで、次はそれに見合った植物の選択です。
実は根床材も植物も、過去の研究である程度絞られていて、適したものがあることも知っていました。
が、それでもこの植物の強さには度肝を抜かれます。今でも。
メノマンネングサ(雌の万年草)という、セダムの仲間です。サボテンとは遠い親戚にあたるようです。
|
|
|
|
特徴は米粒みたいに立体で、いかにも水分を含めますっていう葉っぱ。
それから1枚の葉っぱからでも根・茎が出て育つ、生命力の強さ。
6月くらいに花が咲き、冬は赤くなるだけで枯れません。
根床は1cmあれば十分で、背丈も3〜4cmくらいであまり伸びません。
その分自分の茎を横に倒して、上に伸びて、横に倒して、上に伸びて・・・を繰り返して横に横に広がっていきます。
実はこのへんの特徴、壁面緑化にとってはとても都合が良いです。
根床が薄いから軽くて済む。1cm程度の根床じゃ雑草が生えないし、
枯れないから維持管理に手間がかからない。背丈が伸びないから風に強い。
まさに壁面緑化のための植物と言っていいでしょう。
4月から観察してますが、まだまだ驚かされることが多いです。とにかく強くて不思議な草です。
根床材も植物も、素晴らしい材料がそろったところで、早速根付かせてみました。
メノマンネングサの先端1cmくらいを切って、マットの目にはさむようにして植えていきました。
この時点で相当がんばって一面ほぼ埋め尽くしました。
そのマットを、毎日ビショビショになるくらいに水を足しながら、1ヶ月ほど観察しました。
その結果こうなりました。
|
|
|
|
自分ではもう無理だってくらいビッシリ埋め尽くしたつもりだったんですが、さすがは植物。
たったの1ヵ月でミッッッチリになりました。
ミッチリまで増えることはわかりました。では果たしてしっかり根付いてはいるのでしょうか。
1ヵ月後のマットの裏の様子はこうなってました。
|
|
|
|
根が裏まで飛び出してきてました。完璧に根付いてます。
これだけ根付いて繁殖できればまったく問題ないでしょう。
ここまで確認してから、いよいよ立ててみることにしました。
水槽の中に土台を作って、マットをかけて、ポンプで水を汲み上げて、
マットの上の管を通して散水する仕組みです。
完成したものがこれです。
|
|
|
|
ポイントは一緒に飼ってるグッピーと、管に巻いた糸ですね。
まずグッピーはなんとなく飼ってるわけではありません。Biotope のページで詳しく説明しますが、
魚を飼うと、アンモニア微生物亜硝酸がどうこうで結果、硝酸が溜まります。実はこの硝酸、
何を隠そうそのまま植物の栄養になるのです。
だからグッピーを飼うことで多少なりともメノマンネングサの栄養になってるのです。
それと管に巻いた糸。これは糸の表面張力を利用して、
管から水が均一に流れるようにしたわけです。
糸を巻かないとポンプから押し上げられてくる水の圧力が高い写真の右側に水量が偏るでしょう。
しばらくこれで観察を続け、問題がなければいよいよ屋外で大規模に壁面緑化をしようと思います。
でも、このモデルは無風、気温・湿度ほぼ一定の室内。
小規模であるから可能なポンプでの常時散水。
まだまだ屋外の条件と比較したら、緑化できて当たり前なくらい易しい条件なのです。
屋外で大規模な緑化をする前に、やっておくことがありました。
この緑化は、あくまでも実験としてやるんです。趣味ではなくて。
だから、「壁一面緑化ができました。」だけでは意味がありません。
どのくらいできたかがわからなければダメです。
このどのくらいかを評価する方法を考えておかなければなしません。
どのくらいといっても、たくさんの表現があります。
かなり、たくさん、物凄く、きれいに、びっくりするくらい・・・等。
でもこれらの表現、評価する人間の価値観に依存していて、他の人間からみたら、
ちょっと、わずかに、一部、全然・・・等と評価されるかもしれません。
なので、論文としてまとめる表現は、万人に同じイメージを想像させる表現
でなければなりません。
万人にとって共通のイメージを想像させる表現というのは何か。
と考えると、やっぱり数値ですね。
では、数値で壁面緑化の何を評価すればいいのか。を考えました。
ただの壁の状態が 0 で、完璧に緑化できた壁が 100 とすれば、
百分率(%)で表現できる。
じゃあ、どんな状態が緑化なのか。植物の長さ、重さ、面積、光合成の量・・・。
簡単でした。緑化(りょくか)なんだからそのまま、緑(みどり)化ですね。
要は壁の色のミドリ度合いです。
デジカメで緑化面の写真を撮って、その中の緑色の面積をだして百分率にすれば良いわけです。
一枚一枚手作業で判断するわけにはいきません。すでに写真は1000枚近くあります。
ここはコンピューターに頼ります。
私は半分趣味でプログラミングをします。暇さえあれば研究室で何か作ってます。(詳しくは情報処理のページで)
植物とコンピューター。まったく関係ない、
自分の好きなものを組み合わせることができました。
早速作りました。プログラミングのフローチャートとソース(VB)を載せました。
|
|
|
|
詳しい説明は情報処理のページに載せますが、簡単に説明します。
その前にまず、デジカメの写真で撮った画像の簡単な仕組みから。
1枚の写真は画素(ピクセル)の集まりでできていて、
それぞれの画素にはその画素の位置と色が命令されています。
位置は、写真の左上を原点とした座標の縦(X)と横(Y)の
2つの数値(単位:dot)で表現されています。
色は、光の三原色RGB(赤、緑、青)それぞれの段階の組み合わせで表現されています。
段階は1つの光につき256段階なので、
全部で256×256×256=16777216の色(フルカラー)が表現できます。
黒は(R,G.B)=(0,0,0) 白は(R,G.B)=(255,255,255) 赤は(R,G.B)=(255,0,0) という感じです。
画像の簡単な仕組みがわかったところで、プログラムの説明です。このプログラムは、
一つピクセルのRGB値を読み込む。
→色が緑の範囲(4 ≦ G - R ≦72 かつ 54 ≦ G - B ≦ 126)かどうかを判定。
→YESならPとPgに1を足す。NOならPに1を足す。
→ここまでの作業を全ピクセルで行う。
→緑化率:RATE = ( Pg / P ) * 100 を計算。
フローチャートとソースに使ってる文字はそれぞれ、
X:画像の原点(左上)を基準とした横の位置
Y:画像の原点(左上)を基準とした縦の位置
W:画像の幅(Width)
H:画像の高さ(Height)
P:処理したピクセルの数
Pg:色が緑と判定されたピクセルの数
とりあえず、このソフトを使うと、画像全体の植物が占める割合を計算できます。
実際に使ってみたところを載せてみます。
|
判定前 |
|
|
|
判定後(緑化率:RATE = 40.06%) |
できたてでまだまだ問題だらけではありますが、このソフトで壁面緑化の評価をしつつ、研究を進めて行きたいと思います。